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『キャリアを活かして起業する』 No.1

下記の文章は、人事院事務総局から発行された=新たなステップを踏み出すために(定年後の生活設計)=(平成16年度版)に収められています。平成15年9月国家公務員を対象とした講演で小澤がお話した内容を元に、改めて執筆した内容となっています。

人事院発行の「新たなステップを踏み出すために」表紙

『キャリアを活かして起業する』
有限会社モアフレンズ
取締役 小澤 佳代子
(特定非営利活動法人WING21理事長)

はじめに

元上司に会社設立の報告をした際「ハローワークを退職して起業したのは君が初めてだよ。」と聞かされました。ハローワークに限らず公務員退職後に自力で起業する方は今までほとんどいらっしゃらなかったようです。しかし時代は急速に変化しています。退職後それまでの関連機関などに再就職する道が次第に狭まってきていることに加え、個人の側にも起業をはじめとした他の道を検討したいというニーズもあるようです。ぜひ体験談を紹介してほしいという声はそんな背景から出てきたものと伺っています。

 

「公務員はつぶしが利かない」という台詞は私自身がハローワーク在職時によく聞かされたものでした。公務員を長らくやっていると民間の厳しい現実を知らない、現状認識に甘さがある、などの自戒を込めたコメントでした。しかし果たしてそれは本当でしょうか。民間への再就職とは事情が異なるでしょうが、起業という形態で見る限り私の印象は少し異なっています。というのも私が想像していた以上に人様から信頼していただけるという実体験があるからです。新規事業分野に進出した場合、信頼感を持っていただくためにはある程度の時間の経過や実績を積まなくてはならないと覚悟していたのですが、少なくとも私の場合にはこの点を比較的簡単にクリアしつつあります。「実務に通じていること」「長年公務員をやっていた人だから人間的に信頼できること」などが根拠となっているようで、正直なところ驚いています。更にもうけ主義でやっていないことが好ましいとか、本気で社会貢献を考えているらしいとか、他にもいくつか理由はあるようですが、何はともあれ信頼感を持っていただけるのは私の最大の強みです。そんな私のささやかな体験から、非営利事業で起業しようと考えている方には公務員経験がとても役立つということが言えそうです。

 

さて私が国家公務員として勤務していた職場は、今や頻繁にマスコミに登場するようになったハローワーク(公共職業安定所)でした。不況の世相を反映して今や公務員としての職を得ることはステータスとされていますので、初対面の方には「なぜ25年も勤めた公務員を辞めたのですか?」と必ずといってよいほど聞かれます。そのまま勤め続ければ、今時では珍しい安定した身分が保証され、その上多少目減りしたとはいえ安定した収入も得られるのに、なぜそんな結構な立場を自ら進んで放棄したのか、という言葉が言外に含まれているようです。定年後の起業でも良かったのでは?という疑問や、更に「まだ一般的ではないキャリア・カウンセリングの専門会社なんて、ビジネスとして成り立つの?」という意味を込めて訊ねる方もいらっしゃるようです。

 

そんなもろもろの疑問に対して私は次のように考えていました。20年も前から構想を持っていた事業が、社会環境と自分の経験性の両面から見てそろそろ実行できそうな環境になってきたこと、また提供内容から考えて後継者を育成するには何年もかかるため、定年後では遅すぎてしまうことなどです。個人のキャリアに関する大転換が見られる現在の社会状況こそ、私の構想を実現させる最適な時期であると決断したことになります。

 

さて、前述とは別にこんな感想を漏らす方もいらっしゃいます。「う~ん、それはやっぱり女性だからではないかなあ。僕ら男性からすれば定年前にそんな冒険は許されないからねえ。リストラされたのなら別だけど。」と。これも多くの方の正直な気持ちだと思います。事実私の夫は人が羨む公務員ですし、住宅ローンも、借金もなく、子供はすでに独立していて、今後特に大金が出て行く可能性も低い、などかなり恵まれた立場にいるわけですから、ローンを抱えて、家族の生活を支えている方からすればうらやましい身分ということになるわけです。私自身もそんな恵まれた立場にいることに感謝しつつ、その特権をフルに活用して起業を考えたというのが偽らざる気持ちです。年金受給資格の25年勤続という点も区切りをつけるには良い材料となりました。

 

以上のことを踏まえていただいて、次章からは起業に至ったいきさつや当時の背景等をお話してみたいと思います。 

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